本気で簿記3級を目指すパブロフ㉔ 売上原価②(実践的な内容)

期首と期末に在庫がある場合

前回は期首に在庫がなく、期末に在庫がある場合について学習しました。
今回は期首と期末、どちらにも在庫がある場合について、例題を見ていきましょう。

<例題>
X2年4月1日 当期首の在庫は商品A10個¥8,000である。当社は3分法で仕訳している。
X2年5月20日 商品A10個を¥15,000で売り上げ、代金はすべて現金で受け取った。
X2年8月15日 商品A10個を¥9,000で仕入れ、代金はすべて現金で支払った。
X3年3月31日 決算において、当期末の在庫は商品A9,000円である。仕入勘定で売上原価を計算する方法によって、売上原価の決算整理仕訳を行う。

<解説> 
X2年4月1日
取引がないので、仕訳は書きません。
ただし、繰越商品8,000が前期から引き継がれていますので、繰越商品8,000の残高があります。

続いて、現時点での実際の売上原価と在庫について考えます。
【売上原価】まだ売っていなので、売上原価はゼロです。
【在庫】商品Aの在庫は8,000円です。前期末に在庫となっていた商品Aが、当期首に引き継がれた状況です。

X1年5月20日

現金15,000売上15,000

商品を売り上げた時の仕訳は上の通りです。
続いて、現時点での実際の売上原価と在庫について考えます。
【売上原価】商品を売り上げたので、売った商品の仕入れにかかった金額を考えます。4月1日の商品の在庫は8,000円なので、売上原価は8,000円です。
【在庫】商品を売り上げ、商品Aを引き渡すので在庫が減ります。8,000円-8,000円=0円なので、在庫はゼロです。

X1年8月15日

仕入9,000現金9,000

商品を仕入れた時の仕訳は上の通りです。
続いて、現時点での実際の売上原価と在庫について考えます。
売上原価…5月20日の売上原価8,000円のまま、金額は変わりません。
【在庫】商品を仕入れたので、商品Aの在庫は9,000円です。

ここまでの仕訳をまとめてみます。期首に繰越商品の残高8,000があり、期中に次の2つの仕訳を書きました。

現金15,000売上15,000
仕入9,000現金9,000

仕訳から金額を集計すると次のようになります。(★1)
【仕入】 9,000円
【売上】 15,000円
【在庫(繰越商品)】 8,000円

仕訳の金額を集計したものと実際の情報を一致させるために、決算整理仕訳を行います。
問題文に『仕入勘定で売上原価を計算する方法』と書いてあります。これは、決算整理仕訳をした後に仕入勘定が売上原価の金額になればよい、ということです。
期中において「仕入」は『商品を仕入れた時に使う勘定科目』でしたが、決算以降の「仕入」は『売上原価を表す勘定科目』に変わるのです。

繰越商品は資産の勘定科目でホームポジションは左です。

「仕入」は費用の勘定科目でホームポジションは左です。

<期首の在庫についての決算整理仕訳>
まずは期首の在庫について考えます。(★2)
期首に商品A10個8,000円の在庫がありました。在庫そのものが前期末から引き継がれてきただけでなく、勘定科目も『借方に繰越商品8,000』として引き継がれてきています。

この商品A10個を5月20日に売りましたが、5月20日には「売上」の仕訳のみを行ったので、繰越商品8,000が売上原価になった仕訳をしていません。
そこで決算整理仕訳で繰越商品8,000を減らして、仕入(売上原価としての仕入)を増やします。5月20日に実際には起きていた『繰越商品が売れて、売上原価になった』ことを仕訳でも書く必要があるのです。

「繰越商品」が減るので、ホームポジションと反対側である右に書きます。
「仕入」が増えるので、ホームポジション側である左に書きます。

仕入8,000繰越商品8,000

この仕訳をした時点で繰越商品の残高は8,000-8,000=0となっています。

<期末の在庫についての決算整理仕訳>
次に期末の在庫について考えます。(★3)
商品Aの在庫は実際には9,000円ですが、現時点で繰越商品の残高は0です。
そこで、繰越商品を増やす決算整理仕訳が必要です。仕入れた商品が売れずに、繰越商品になったので、「仕入」を減らして「繰越商品」を増やす仕訳が必要です。

 「仕入」を減らすので、ホームポジションと反対側である右に書きます。
「繰越商品」を増やすので、ホームポジションと同じ側である左に書きます。

繰越商品9,000仕入9,000

<決算整理仕訳>
★2と★3の仕訳を合わせるとX2年3月31日の決算整理仕訳になります。(★4)
簿記では通常、借方と貸方に同じ勘定科目がある場合は合算するのですが、この決算整理仕訳は合算せずに書きます。上の行が期首在庫の金額、下の行が期末在庫の金額を表しており、このまま残しておいた方が読み返したときにわかりやすいからです。試験で合算するかしないか判断する出題はされないので厳密に暗記しなくても大丈夫です。

仕入8,000繰越商品8,000
繰越商品9,000仕入9,000

★1の時点(決算の前)では下の金額でした。
【仕入】 9,000円
【売上】 15,000円
【在庫(繰越商品)】 8,000円

これに★4の決算整理仕訳を反映させると、実際の状況と一致します。
【仕入】 9,000円+8,000円-9,000円=8,000円
【繰越商品】 8,000円-8,000円+9,000円=9,000円

決算の時点で実際の状況
【売上原価】売上原価8,000円
【在庫(繰越商品)】在庫9,000円

決算整理仕訳を簡単に書く方法

2回にわたり売上原価の決算整理仕訳を学習してきましたが、こんなに複雑なことを考えながら仕訳を書くの?もっと簡単な仕訳にしたら良いのに!と感じる方もいらっしゃると思います。

実は『分記法』や『売上のつど売上原価に振り替える方法』といった、もっと考え方が簡単な仕訳方法もあります。

しかし日商簿記3級では『3分法』が試験範囲です。『3分法』では、「仕入」「売上」「繰越商品」のみで売上・売上原価・在庫を表すので、仕訳が複雑になってしまいますが、次の理由により実務で非常によく使われています。
・『仕入れ』と『売り上げ』という会社で最も多い取引を、どちらも1行で仕訳できる
・期中に何百万件「仕入」「売上」の仕訳を書いたとしても、売上原価の決算整理仕訳が2行で済む

簿記検定の中で最もメジャーと言ってもよい『日商簿記3級』で、実際にほとんどの会社で使われている『3分法』が試験範囲になっています。

そうは言っても、試験で理屈を思い出しながら売上原価の決算整理仕訳を書くと、かなり時間を取られてしまいます。
そこで先人たちが編み出した技が『しーくり くりしー』です。
❶上の行に「仕入」「繰越商品」と書き、金額は期首の在庫(繰越商品)の金額を書きます。
❷下の行に「繰越商品」「仕入」と書き、金額は期末の在庫(繰越商品)の金額を書きます。

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