有価証券とは、株式や債券(国債や社債)のことをいいます。
有価証券は保有目的によって、使用する勘定科目や仕訳が変わってきます。
どのように分けるのか?
有価証券を購入する目的を保有目的といいます。
有価証券は保有目的によって、次の5つの分類に分けることができます。
区分 | 保有目的 | 株式 | 債券 |
売買目的有価証券 | 安く買って高く売ることで差額をもうける目的で持っている有価証券のこと | ○ | ○ |
満期保有目的債券 | 満期まで保有する目的で購入した債券のこと | × | ○ |
子会社株式 | 発行済株式数の50%超を保有している会社(子会社)の株式のこと | ○ | × |
関連会社株式 | 発行済株式数の20~50%を保有している会社(関連会社)の株式のこと | ○ | × |
その他有価証券 | 上記4つ以外の有価証券をその他有価証券という | ○ | ○ |
なお、発行済み株式数の50%を取得した場合、関連会社株式になりますので、注意が必要です。もし、50.1%(過半数)なら、子会社株式になります。
問題ではどのように判断するの?
実際の問題では、どのように判断すればいいのか、見ていきましょう。
例題:次の有価証券を購入した場合、どのように分類するのか答えなさい。
(1)当社は、熊本株式会社の株式200株を取得した。なお、これまでに熊本株式会社が発行する株式の過半数(50%超)を取得している。
(2)当社は、新たに福岡株式会社の株式1,000株を取得した。なお、福岡株式会社の発行済株式総数は4,000株である。
(3)当社は、長期利殖目的で長崎株式会社の株式1,000株を取得した。
(4)当社は、売買目的で佐賀株式会社の株式500株を取得した。
(5)当社は、得意先である鹿児島株式会社との取引の開始にあたり、同社との長期にわたる取引関係を維持するため、同社の株式10,000株を取得した。
(6)当社は、宮崎株式会社の発行した社債400口を取得した。なお、同社の社債は満期まで保有する目的で取得している。
解答と解説
(1)子会社株式
問題文に「これまでに株式の過半数(50%超)を取得している」と指示があるので、子会社株式に該当する。
(2)関連会社株式
次の式より、発行の25%を取得しているので、関連会社株式に該当する。
計算式:取得1,000株÷発行済株式総数4,000株=25%
(3)その他有価証券
問題文に「利殖目的で取得した株式」と指示があるが、保有目的がよくわからないため、どの保有目的に該当するのか判断する。
①売買目的ではないため、売買目的有価証券ではない。
②株式には満期がない点、債券ではない点より、満期保有目的債券ではない。
③発行済株式総数が不明であり、株式の保有割合が計算できないため、子会社株式・関連会社株式ではない。
④以上より、その他有価証券に該当する。
(4)売買目的有価証券
問題文に「売買目的で取得した」と指示があるので、売買目的有価証券に該当する。
(5)その他有価証券
問題文に「長期にわたる取引関係を維持するために取得した株式」と指示があるが、保有目的がよくわからないため、どの保有目的に該当するのか判断する。
①売買目的ではないため、売買目的有価証券ではない。
②株式には満期がない点、債券ではない点より、満期保有目的債券ではない。
③発行済株式総数が不明であり、株式の保有割合が計算できないため、子会社株式・関連会社株式ではない。
④以上より、その他有価証券に該当する。
(6)満期保有目的債券
問題文に「社債は満期まで保有する目的で取得した」と指示があるので、満期保有目的債券に該当する。
<ポイント>
問題を解く場合は、問題文から次のように分類します。
問題文の指示 | 分類 |
売買目的と書いてある株式・債券 | 売買目的有価証券 |
満期保有目的と書いてある債券 | 満期保有目的債券 |
発行済株式総数が書いてあり、保有割合を満たす株式 | 子会社株式 関連会社株式 |
以上の条件が書いていない株式・債券 | その他有価証券 |
貸借対照表の表示について
貸借対照表では、どのように表示されるのか、見ていきましょう。
基本的には、長短分類(期末日の翌日から1年超かどうか=翌期に期日がくるかどうか)で判断することができます。子会社株式と関連会社株式は、連結会計と持分法を適用することになりますので、貸借対照表の表示区分を分けています。なお、持分法は簿記1級の範囲です。
貸借対照表の表示名 | 保有目的 | |
流動資産 | 有価証券 | 売買目的有価証券 |
満期日まで1年以内の満期保有目的債券 | ||
満期日まで1年以内のその他有価証券(債券) | ||
固定資産 | 投資有価証券 | 満期日まで1年超の満期保有目的債券 |
満期日まで1年超のその他有価証券(債券) | ||
その他有価証券(株式) | ||
関係会社株式 | 子会社株式 | |
関連会社株式 |
非上場株式について
上場している株式と非上場株式があります。簿記2級で学習しているのは上場株式で、市場で売買されていますので時価があります。一方、非上場株式は、市場で売買されていないので、時価がありません。非上場株式については、簿記1級でも出題される可能性は低い内容ですので、覚える必要はありません。
関連ページ
それぞれの会計処理や仕訳については、次のページを参照ください。
38 Comments
よせだ先生こんにちは。
総仕上げ問題集商業簿記120ページからの問題で質問があります。
X2年10月31日の仕訳を書く際に私は端数利息を売買目的有価証券の下に書き、未収入金をまとめて書いてしまいました。そのため10月31日の有価証券利息の総勘定元帳の摘要が諸口になってしまいました。端数利息の仕訳をする際にはまとめていた記憶があるのですが、今回の問題では分けて記載されているのはどうしてでしょうか。
忙しいところ申し訳ありません。お時間のある時に回答いただけると幸いです。
よろしくお願い致します。
総仕上げ問題集をお使いくださり、ありがとうございます。
総仕上げ問題集の解答は「日商簿記2級の模範解答」に合わせて作成しております。
本番の試験で、端数利息の仕訳をまとめて書き、総勘定元帳の摘要欄を「諸口」と記入した場合、不正解と扱われました。このため、試験の模範解答である「別々に書く方法」に合わせております。
このように採点された意図を推測すると、端数利息の取引と売買目的有価証券の売却の取引は別々の取引であるため、ということだと思うのですが、個人的にはどちらでも正解だと思います。そして、第1問の仕訳で出たときは、まとめて書く方法が模範解答だったりします。
どうやって覚えればいいのか、というと、
第1問で出てくる場合は「まとめて書く」、第2問で出てくる場合で総勘定元帳を書く時は「端数利息の仕訳を別々に書く」と考えれば大丈夫です。
先生ありがとうございます。スッキリしました‼︎
まだまだ合格できるか分かりませんが、パブロフくんと一緒に最後まで諦めずに頑張ってみようと思います。
解決したようで良かったです。合格を応援しています!
満期保有目的の債券の貸借対照表および評価差額は?
満期保有目的の債券(日商簿記では、満期保有目的債券と表記します)の貸借対照表の区分は、記事に書いてある通りです。
その他有価証券評価差額金については、純資産の部 評価・換算差額等 その他有価証券評価差額金、として表示します。
ダウンロードの実戦問題2019②の第2問について質問です
問3の投資有価証券の合計金額を答える問題ですが、その他有価証券も満期保有目的債券も投資有価証券としてまとめる、ということでしょうか?
投資有価証券というのが何を指すのか分かっていません。
よろしくお願いします。
コメントありがとうございます。
投資有価証券とは、貸借対照表に表示する勘定科目です。貸借対照表では、投資有価証券に満期保有目的債券とその他有価証券をまとめて表示します。テキストをお持ちでしたらP.210、P.335に書いてありますので、みてみてください。
先生ありがとうございます!
貸借対照表上の話であるということを見落としてました。
解決したようでよかったです♪
2020年版実践問題6回分をダウンロードしました。
2回目~6回目までは2019年版の実践問題と同じだったのですが、
これで合ってるのでしょうか?
2020年バージョンのアプリも購入しなければ、2回目~6回目の実践問題が
新しくならないのならば、再度アプリ購入します。
購入する必要があるのかを教えていただけますでしょうか
よろしくお願いいたします。
↑のコメント主です
なぜか全然違う場所にコメントが・・・
実践問題ダウンロードページのコメント欄に記載したのですが
申し訳ございません。
よろしくお願いいたします。
アプリをお使いくださり、ありがとうございます。
アプリは無料で2020年度版にアップデートしてお使い頂けます。別途購入する必要はございません。2019年度版の実践問題と2020年度版の実践問題は一部の問題(最近の出題に合わせたもの)を変更しましたが、同じ問題がほとんどです。実践問題は範囲改定や試験紙傾向が変わったときに大きく変更するようにしています。
よせだ先生
お世話になっています。
商業のテキストのP344ですが、その他有価証券+その他有価証券評価差額金の金額が貸借対照表の固定資産の投資有価証券のところに記載されていますが、その他有価証券の場合は1年以内か1年超かどのように判断すれば良いのでしょうか。
お手数ですが、ご返信よろしくお願いします。
テキストをお使いくださり、ありがとうございます。
P.188、P.189を見てみてください。有価証券には債券と株式の2つがあります。債券は、払い戻しが受けることが決まっているため、満期日の期限があります。株式には、満期日というものはありません。その他有価証券で株式の場合は、投資有価証券になります。その他有価証券で債券の場合は、1年以内かどうかで流動と固定の区分が変わってきます(P.189の一番下を参照)。
よせだ先生
ご返信ありがとうございます。
有価証券に関してはどうもごちゃごちゃになりがちなので助かりました。
解決したようで良かったです。勉強頑張ってください♪
満期有価証券がいまだにわから無い
ダウンロード実践問題⑤について質問させてください。問題2ー③の満期保有目的債権Bについて満期日まで一年以上ある場合、一年未満の場合どちらも有価証券になりますか?満期まで一年以上あっても満期保有目的債権は、投資有価証券にはならないですか?
満期保有目的債券Bというのは、その他有価証券のB社社債のことでしょうか?
長短分類は、翌期に解消するかどうかで決まりますので、翌期に満期日がくる場合は、流動資産の有価証券、そうでない場合は固定資産の投資有価証券になります。
https://pboki.com/nisho2/fs_h/fs_h.html
なお、漢字が債権ではなく債券ですので、試験で間違えないようご注意ください。
よせだ先生ご説明、漢字のご指摘ありがとうございます。
取り急ぎお礼まで🐶
パブロフ簿記のテキストを使用しています。
質問なのですが、2級(第5版)のp218、Q4で時価と帳簿価額のどちらを貸借対照表に反映させるのかがよく分かりません(>_<)どの様に考えたらいいでしょうか?
テキストをお使いくださり、ありがとうございます。
P.219の解説部分をまとめますと、次のようになります。
<まとめ>
売買目的有価証券 → 時価
満期保有目的債券 → 原価(帳簿価額)か、償却原価法(P.201の豆知識)
子会社株式 → 原価(帳簿価額)
関連会社株式 → 原価(帳簿価額)
その他有価証券 → 時価
流動資産の1年以内とは、期末日の翌日から1年以内という意味ですか?
返信の程、宜しくお願いします。
はい、そうです。翌期に解消するかどうかで判断します。
そうなんですね。
ありがとうございました♪
もう既に出ている話かもしれませんが、商業簿記2級 総仕上げ問題集のp94問3の月数ですが56ヶ月で合っていますでしょうか?
56か月で合っています。正誤表に出ていない限り、金額、月数、解答は正しいですので、ご安心ください。
パブロフ簿記でお世話になっております。
勉強しながらパブロフ君の漫画に癒されています。
質問ですが
上記の問題、>例題:次の有価証券を購入した場合、どのように分類するのか答えなさい。
2)当社は、新たに福岡株式会社の株式1,000株を取得した。なお、福岡株式会社の発行済株式総数は4,000株である。
と問題でありますが、>発行済株式総数は4,000株とは、新たに1000株取得した分も含まれているという意味ですか?
発行済株式総数って取得のどのタイミングなのかなって思ってしまいました。
コメントありがとうございます。
新しい株式を発行するのは、①会社設立のとき、②増資により新株を発行したとき(合併を含む)の2つです。この2つのときに、発行済株式数が増えます。
これら発行された株式が、東証などの市場に流通していますので、他の会社の株式を取得した場合、すでに発行されている4,000株のうち、当社が1,000株を取得したということです。
本問は「当社が新たに福岡株式会社の株式を取得した」のであって、「福岡株式会社が新株を発行し、当社が引き受けた」とは書いていません。
こちらで大丈夫でしょうか。
福岡株式会社が発行している株式が4000株でその中の1000株を当社が保有してるって事ですね!なので分母は4000株を使うわけなんですね。教えて頂き有難うございました。その会社は株をどのぐらい発行してるのか、意識して問題を解くようにしたいと思います。
ご理解頂けたようでよかったです。
2月の試験は有価証券が出題される可能性が高いので、今のうちにマスターしてきましょう♪
勉強頑張ってきてください♪
144回の試験に向けてサンプル問題を解いているんですが、143回の補助簿(固定資産管理台帳)など想定していない形での出題があり得るので有価証券台帳の記入方法について調べているところなのですが、有価証券利息等を記入していくものなんでしょうか?
もちろん出題されたことがないので本でも解説がないのですが、どのように対策すればいいのでしょうか?
前回固定資産台帳が出題されて点数が思うように取れなかったので、今回はサンプル問題等を活用して対策したいと考えています。
よろしければ考え等教えていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
テキストをお使いくださり、ありがとうございます。
■補助簿の対策について
補助簿の形式は、会社や会計ソフトでバラバラですので、特に形式は決まっていません。144回は私も初めて見る形式でした。
有価証券台帳の形式もバラバラでして、インターネットで検索して出てくる有価証券台帳が正しい訳でもありません。日商の試験で出た固定資産台帳が実務で使うものと同じでもありません。
どのように対策をするのか、という視点では、①下書きを書いて金額を計算すること、②仕訳を書けること、③下書きの金額から貸借対照表や損益計算書の計上金額を求める練習をすることが大切です。この内容は実践問題で出題しています。
■サンプル問題について
パブロフのテキストをお使いでしたらサンプル問題の内容は、ダウンロード特典の実践問題ですべてカバーしていますので、サンプル問題を解く必要はありません(解き方や解説がないので難しいです)。実践問題を解けば十分です。
143回の第2問のような実務的な問題が出た場合、事前対策は不可能で、合否に関係がない問題です。このような捨て問に対して特別な対策する必要はなく、基本的な問題で満点を取る練習が大切です。具体的には、実践問題や過去問で満点が取れる様になるまで何度も繰り返すこと、2時間問題を90分以内に解けるようにスピードをつけること、ケアレスミスが起きないように対策を済ませておくことが重要です。
http://pboki.com/missnote/missnote.html
144回の試験勉強、頑張ってください♪
よく分かりました。詳細な解説大変有難うございました。本番に近くなったらパブロフくんの本試験に近い予想問題を解いてみたいと思います。
ご理解頂けたようで良かったです。引き続き勉強頑張ってください♪
お世話になっております。
こちらに書いていいのかどうかわかりませんが・・
「パブロフ簿記2級(商業簿記)」アプリ、
Lev3の41/106,42/106の「有価証券の表示名」の解説で、
「関連会社株式」の定義を
「25%以上50%以下」とありますが、
「20%以上50%以下」ではないですか?
ご指摘ありがとうございます。
誤植がございまして、大変申し訳ございませんでした。関連会社株式の定義は20%以上50%以下が正しいです。
次回のアップデートで修正致しますので、お待ち頂けますと幸いです。