連結会計④ 未実現利益の消去(開始仕訳がない場合)

簿記の学習の中で難しい連結会計ですが、その中でも理解が難しいのが「未実現利益の消去」です。受験生の方から質問を頂くことも多いので、今回はこちらの記事で詳しく説明します。

 

もくじ
連結会計① 全体像と手続き
連結会計② 試験範囲と学習方法
連結会計③ 連結修正仕訳と問題の解き方
連結会計④  未実現利益の消去(開始仕訳がない場合)★今回
連結会計⑤  未実現利益の消去(開始仕訳がある場合)

連結会計の解き方動画
連結精算表の解き方
連結財務諸表の解き方
タイムテーブルの書き方と連結第4年度の解き方

 

パブロフくんお…お兄さん…

お兄さんどうしたんだい?またお金がないの?

パブロフくん違うよ!連結会計がわからないんだよ!

お兄さんあぁ、これは商品の未実現利益の消去だね。難しいから理解しにくいんだよね。

パブロフくんサラッと書いてあって、どうなっているのか、わかりにくいんだ。

お兄さん最終的には覚えちゃえばいいんだけど、詳しく説明するよ。今回は基本的な「開始仕訳がない場合」について、勉強しよう。

パブロフくんお願いします。そもそも「開始仕訳がない場合」って、どういう状況?

お兄さん当期から連結会社間で商品売買をスタートした場合だよ。つまり、連結会社間で前期に商品売買を行っていないので、開始仕訳を書かないんだ。

パブロフくんそういうことか、なるほど~。

 

今回のもくじ
(1)連結会社間の取引の消去とは
(2)商品の未実現利益の消去とは
(3)商品の未実現利益の消去の仕訳を理解しよう
(4)アップストリームの場合

 

(1)連結会社間の取引の消去とは

親会社と子会社は別々の会社ですから、親会社と子会社の間で商品売買の取引をする場合もあります。たとえば親会社が子会社へ商品を100円売り上げた場合、親会社の個別財務諸表には売上高100円、子会社の個別財務諸表には売上原価100円が計上されます。

しかし、連結財務諸表を作成するさいには、同じ連結グループの中で商品が移動しただけと考えるので、親子間の取引の金額は消去する必要があります。これが「連結会社間の取引の消去」の連結修正仕訳です。

未実現利益の消去の連結修正仕訳1

連結会計は次の手順で作成するため、「売上」「仕入」「繰越商品」といった勘定科目ではなく、財務諸表で使われる「売上高」「売上原価」「商品」といった勘定科目で連結修正仕訳を書く点がポイントです。

未実現利益の消去の連結修正仕訳2

 

(2)商品の未実現利益の消去とは

売上高と売上原価は消去できましたが、もう1つ困ることがあります。たとえば親会社が90円で仕入れた商品を、子会社へ100円で売ったとします。下のイラストのように親会社から子会社へ商品を売ることを「ダウンストリーム」と言います。

未実現利益の消去の連結修正仕訳3

それが当期のうちに外部へ売ってしまえば問題はありません。これを利益が実現したといいます。外部に商品を売ったことで、連結グループは利益を100-90=10円得たということです。

未実現利益の消去の連結修正仕訳4

しかし、当期のうちに外部へ売ることができず、期末に子会社に商品が残ってしまったらどうでしょう。

未実現利益の消去の連結修正仕訳5

外部から買った商品は90円なので、連結グループとしては期末商品90円となるはずですが、親会社が利益10円を上乗せしたので、期末商品100円となってしまっています。差額の10円を未実現利益といい、連結グループとしては余計な金額なので連結修正仕訳で消去する必要があります。

 

(3)商品の未実現利益の消去の仕訳を理解しよう

商品の未実現利益を消去する連結修正仕訳は、次のようになります。商品に含まれる未実現利益10円を消すため商品を右に書き、反対側に売上原価を書きます。

未実現利益の消去の連結修正仕訳6 

この仕訳を知っていれば試験の問題を解くことはできますし、実務でも十分です。最終的にはこの仕訳を暗記することになります。ただ、なぜこのような仕訳になるのか、理由も気になるので詳しく見ていきましょう。

未実現利益の消去の連結修正仕訳5

上のイラストの状況を勘定科目の金額で表すと次のようになります。親会社は子会社へ100円の売上、90円で仕入れていますので売上原価は90円。子会社はこの商品を売っていないので売り上げは0円。親会社から100円で仕入れてはいますが、この商品を売っていないので売上原価は0円になります。子会社に期末商品100円が残っています。親会社の利益10円と、子会社の商品100円に含まれる10円が未実現利益です。そして、親会社と子会社を合算すると連結グループ全体の金額になります。

未実現利益の消去の連結修正仕訳7

この連結グループ全体の金額は、よく見ると連結会計としてはふさわしくない金額になっています。連結グループとしては「商品を外部から90円で仕入れ、その商品を売らずに期末商品になっている状況」なのに、売上が100円計上されているのはおかしいです。

そこで、連結修正仕訳を書いて、当期の連結グループ全体の状況を正しく表す金額に修正する必要があります。

 

連結修正仕訳① 連結会社間の取引の消去の仕訳

まずは「連結会社間の取引の消去」の連結修正仕訳を、連結グループ全体の金額に反映させます。

未実現利益の消去の連結修正仕訳12

そうすると、次のようになります。売上高と売上原価を100円減らすので、売上高は0円に、売上原価はマイナス10円になり、利益としてはマイナス10円になります。

未実現利益の消去の連結修正仕訳8

連結修正仕訳② 未実現利益消去の仕訳

次に「未実現利益消去」の連結修正仕訳を書き、連結グループ全体の金額に反映させます。

未実現利益の消去の連結修正仕訳6

売上原価にプラス10円するので0円になり、商品をマイナス10円するので90円になります。

未実現利益の消去の連結修正仕訳9

そうすると、当期の連結グループ全体の状況にピッタリ合います。連結グループとしては外部へ売っていないので売上0円、売上原価0円。商品は未実現利益を除いた90円となります。

未実現利益の消去の連結修正仕訳5

これが、連結修正仕訳の理由ですが…とても複雑です。試験のときにこれを思い出しながら仕訳を書いたら、とても時間が足りません。この説明を読んで「なるほど!」と理解したら、連結修正仕訳①②を自分で書けるように覚えて、短い時間で書くことができるよう練習しましょう。

 

(4)アップストリームの場合

これまでは親会社が子会社へ売る「ダウンストリーム」の例を見てきました。続いて子会社が親会社へ売る「アップストリーム」を考えます。

未実現利益の消去の連結修正仕訳10

■ダウンストリームの場合
先程学習したダウンストリームの場合は、次のように「親会社の利益」を調整し、子会社は貸借対照表の勘定科目である商品の調整をしました。

未実現利益の消去の連結修正仕訳7

■アップストリームの場合
今回学習するアップストリームの場合には、次のように「子会社の利益」を変動させるので、これによって「非支配株主に帰属する当期純利益」も変動させる必要があります。

未実現利益の消去の連結修正仕訳11

ここでは、親会社が子会社の株式の60%を持っている場合を例として説明します。今回の例では、親会社が60%持っているので、残り40%は非支配株主が持っていることになります。

ステップ1 連結会社間の取引
これに関してはダウンストリームとアップストリーム関係なく、この仕訳だけを書きます。「非支配株主に帰属する当期純利益」は出てきません。

未実現利益の消去の連結修正仕訳12

ステップ2 未実現利益の消去
まずはダウンストリームと同じ仕訳を書きます。

未実現利益の消去の連結修正仕訳6

ステップ3 未実現利益の消去に関する「非支配株主に帰属する当期純利益」の調整
アップストリームの場合には、子会社の利益が10減るので「非支配株主に帰属する当期純利益」も減らす必要があります。
 10×40%=4

「非支配株主に帰属する当期純利益」は左側の勘定科目なので、減らす場合は右に書きます。また、反対側に非支配株主持分を書きます。非支配株主持分は右側の勘定科目なので、左に書くと減ったということです。子会社の利益が減った分、非支配株主の持分が減ったということです。

未実現利益の消去の連結修正仕訳14 

<まとめ>
アップストリームの連結修正仕訳は、次のようになります。

未実現利益の消去の連結修正仕訳15

 

パブロフくんう~ん。ようするに、連結グループで正しい金額になるように調整してるってこと?

お兄さんそうそう。そのために連結修正仕訳を使うんだ。理由がわかったら、連結修正仕訳を覚えなきゃダメってことだね。

パブロフくんうん、覚えた方が早そうだね。

お兄さん次回は、開始仕訳がある場合の未実現利益の消去について学習しよう。

パブロフくんえぇ~、これでお腹いっぱいだよ~。

 

関連ページ

連結会計① 全体像と手続き
連結会計② 試験範囲と学習方法
連結会計③ 連結修正仕訳と問題の解き方
連結会計④  未実現利益の消去(開始仕訳がない場合)★今回
連結会計⑤  未実現利益の消去(開始仕訳がある場合)

連結会計の解き方動画
連結精算表の解き方
連結財務諸表の解き方
タイムテーブルの書き方と連結第4年度の解き方

4 Comments

  1. k-s on 2019年10月26日 at 23:57

    よせだ先生

    とても参考になる記事をありがとうございます。
    現在2級の勉強をしているのですが、連結会計に苦戦をしてこの記事にたどり着きました。
    以前よりも理解が深まったと思います。とてもわかりやすい解説をありがとうございます。

    具体例から、<売上高―売上原価>の仕訳だけでは売上原価がマイナスになることがとても分かりやすかったです。

    ちょうど最近公開された記事のようですので、先生が11月の試験に向けて勉強している人のために書いてくださったのだとおもいます。
    お忙しい中、どうもありがとうございます。

    ただ、それでもよくわかっていない点、誤解している点があると感じ、恥ずかしながらこの機に質問させていただきました。

    【相殺消去と非支配株主持分の関係】についてです。

    分かりにくい点をうまく文章にできないのですが、例えば…
    親から子に、高金利で多額の貸付があった場合、子には多額の費用が発生します。
    そうすると、子会社の個別財務諸表での当期純利益は少なくなってしまうと思います。

    その結果、繰越利益剰余金が少なくなり、非支配株主持分の増加量が減ってしまうのではないか、親会社が操作できてしまうのではないかと思います。
    だから、そうならないようになんらかの操作・仕訳をおこなうのではないかと考えたのですが、それがどこで行われているのか分かりません。

    この点が疑問で、例えば第148回2級過去問の第三問(連結精算表の作成)も、???な部分があります。

    その問題の解答では、子会社の個別財務諸表の利益剰余金の金額と、そこから予測される利益から

    ◆(その期の子会社の純利益)×(非支配株主の持分比率)

    を計算することで非支配株主持分の増加量を求めています。

    ですが私は、子会社の支払利息の相殺処理があったので、その結果減ったであろう純利益の一部を非支配者持分の増加にあてないといけないのではないかと思いました。

    この過去問の解答の計算方法で被支配者の持分を計算できてしまうのだとすると…

    ●親会社が貸付をして子に支払利息が発生したら、非支配株主持分は増えにくくでき、

    ●(逆に)子が親に貸付をして受取利息が発生したら、それを記した個別財務諸表をもとに上記の計算式で非支配株主持分を求めた結果、非支配株主持分は不当に上昇させることが可能
    (こちらの場合はアップストリームのときの処理をして、非支配株主持分を減少させて、不当に上昇できないようにする?)

    となってしまうのではないでしょうか。
    このように親会社がいろいろ操作できないようにするために連結会計の基準があると思うので、どこかに誤解があると思うのですが、それがどこなのかがわかりません。

    まとまりのない文で、疑問点が伝わらなかったかもしれません。

    まだ簿記をはじめて1か月もしないので、見当はずれな疑問でしたらすみません。
    もしよろしければ、コメントを頂けると幸いです。

    また、これからもぜひ簿記の書籍やコンテンツを楽しみにしております。
    (1級も今後受けたいので、ぜひ出版お願いします!)

    どうぞよろしくお願い致します。

    • パブロフくん on 2019年11月1日 at 15:38

      コメントありがとうございます。
      連結会計は、連結グループ全体で正しい金額になっていればOK、細かい調整はしない、と考えましょう。連結グループの子会社が数百社もあり、国も違えば会計基準も違うので、細かい調整をしても手間がかかるためです。不正な取引は他の基準などでもカバーしています。

      連結会計の内容の10%程度しか勉強しないと思って、深入りしないのがオススメです。連結会計を理解しようとしても、全体像を勉強しないので難しいです(財務諸表論で学習する会計基準の理解が必要です)。

      ■連結財務諸表は誰のために作成しているのか?
      連結グループの財務諸表は、グループのトップである「親会社の株主」に対する情報提供のため作成します。連結グループでは、親会社の株主が多数派であり、子会社の非支配株主持分は少数派です。支配の過半数以下で影響力のない「非支配株主」は重要ではなく、「非支配株主持分」を正確に計算することに意味はないのです。

      非支配株主持分は、子会社の純資産のうち「親会社の株主の持分を除いた部分」ですから、親会社の株主にとって、あまり意味のない情報です。

      ■収益と費用の相殺消去について
      「連結会社間の取引の相殺」を行った場合に、子会社の当期純利益の変動は考慮せず、非支配株主持分を調整しません。会計のルールを作る人たちが「取引の相殺自体を行うことに意味がある」「子会社の当期純利益の変動を調整して正確に計算しても意味がない」と考えているのです。

      >子が親に貸付をして受取利息が発生したら、それを記した個別財務諸表をもとに上記の計算式で非支配株主持分を求めた結果、非支配株主持分は不当に上昇させることが可能

      グループ全体でみると、収益と費用が減って増減ゼロです。親会社の株主にとって、当期純利益の増減ゼロですから、相殺だけで十分です。連結グループ全体で正しい利益になっていればOKなのです。

      ■他にも基準があります
      連結会計の基準だけではありません。連結会計は非常に範囲が広く、簿記2級で学習する内容の他にいろいろとルールがあり、親会社が子会社を利用して、不正な取引を行わないように情報開示が行われています。例えば、注記事項です。財務諸表には「注記事項」が合わせて開示されます。この注記事項に「関連当事者間の取引」という内容として、「親会社に対する金銭債権債務」を開示しなければいけません。理由を詳しく説明すると大変ですので、ご自身で調べてみてください。

      • k-s on 2019年11月5日 at 18:38

        ご返信いただきまして、誠にありがとうございます。また、お礼が遅れましてすみません。

        連結会計について、誰のために作成するかを念頭においておりませんでした。

        財務諸表論などまで勉強することで全体像が見えてくるというアドバイスを活かして、今は2級範囲の習熟に集中し、合格してから理解していきたいと思います。

        3級の過去問は1時間位で終わりますが、2級は時間が足りなくなります。

        考えて思い出している時間や、自分なりのメモの仕方の確立ができていない点が問題なので、そのあたりをトレーニングしようと思います。

        先生の解答時間を見ると、解けたと身につけたでは次元が違うのだと感じ、もっと頑張ろうと思えます。

        数々の参考になるコンテンツをありがとうございます!

        • パブロフくん on 2019年11月8日 at 17:03

          連結会計、解決したようで良かったです。最近の簿記2級はボリュームが多いので2時間で解くのも大変ですよね。
          簿記は難易度が上がるにつれて、得意な人の解き方をマネすることが大切になってきます(私も会計士試験で実感しました)。
          簿記3級の問題を解くときは「問題文を読んで仕訳を書く」「答案用紙に記入する」の2つだけを考えて解いていると思います。問題文を読み、下書き、解答するという作業(解き方の流れ)が自動的に行われているためです。取引や仕訳の理解は、問題の解き方とは別のものですので、理解した後は解き方を覚えて自分で再現できるようになることが簿記を得意にする近道です。
          簿記3級と同じように簿記2級も下書きの書き方は決まっていますので、テキストや問題集の下書きの書き方と解き方をマスターすれば大丈夫ですよ。
          合格を応援しています!

コメントを残す