CVP分析② 実戦編【今回】
う~ん、う~ん。
こんにちは、パブロフくん!今日はどうしたの?
あっ、お兄さん、良い所に。CVP分析はこの前教えてもらってわかったんだけど、工業簿記の問題が解けないの。
そうだね、前の話は一部しか説明しなかったから、解けないかもしれないなぁ。
お兄さん、つづきも教えて~。
売上高と利益の関係
売上高、原価、利益はどのように計算しているのか、改めて確認しましょう。売上高から原価を引いたら、利益が計算できます。式にすると次のようになります。
売上高-原価=利益
ここで、直接原価計算の場合、売上原価を「変動費」と「固定費」の2つに分けて考えます。
売上高-変動費-固定費=利益
上記の売上高と利益の関係を使って、問題を解いていくことになります。どんな問題でも、この関係は維持されますので、しっかり覚えておきましょう。
参考:直接原価計算で出てくる原価
変動費 | 変動製造原価 | 直接材料費 | |
変動加工費 | 直接労務費 | ||
製造間接費 | |||
変動販売費 | |||
固定費 | 固定製造原価 | 固定加工費 | 固定直接労務費 |
固定製造間接費 | |||
固定販売費 | |||
一般管理費 |
実際の問題①
次の損益計算書にもとづいて、(1)~(4)の問いに答えなさい。
【損益計算書】
売上 @2,000円×1,000個=2,000,000円
変動費 @1,800円×1,000個=1,800,000円
固定費 100,000円
営業利益 100,000円
(1)損益分岐点の売上高を答えなさい。
(2)営業利益200,000円を達成するためには、いくらの売上高が必要か答えなさい。
(3)実際の損益計算書の損益分岐点比率と安全率を答えなさい。
(4)営業利益200,000円を達成した場合の損益分岐点比率と安全率を答えなさい。なお、割り切れない場合には、小数点以下第2位を四捨五入すること。
<解答>
(1)1,000,000円
(2)3,000,000円
(3)損益分岐点比率50%、安全率50%
(4)損益分岐点比率33.3%、安全率66.7%
<解き方>
(1)損益分岐点の売上高
ステップ1 売上と利益の関係を書く。損益分岐点では、利益がゼロになるので、何個売れれば利益がゼロになるのかを考える。
売上高-変動費-固定費=利益
ステップ2 何個売るのか、まだ決まっていないので、■個とする。ステップ1の公式に一つ一つあてはめていく。
売上高 @2,000×■個
変動費 @1,800×■個
固定費 100,000円
利益 損益分岐点なので、利益は0円
↓
売上高@2,000円×■個-変動費@1,800円×■個-固定費100,000円=利益0円
↓
2,000×■個-1,800×■個-100,000円=0円
↓まずは、2,000×■-1,800×■を計算する
200×■個-100,000円=0円
↓次に、100,000を移動させる。
200×■個=100,000円
↓最後に、100,000円÷200で■個を求める
■個=100,000÷200
↓
■個=500個
ステップ3 500個売ったときの売上高を計算する。
@2,000×500個=1,000,000円(解答)
(2)営業利益200,000円を達成する売上高
ステップ1 売上と利益の関係を書く。
売上高-変動費-固定費=利益
ステップ2 何個売るのか、まだ決まっていないので、■個とする。ステップ1の公式に一つ一つあてはめていく。
売上高 @2,000×■個
変動費 @1,800×■個
固定費 100,000円
利益 問題文より営業利益は200,000円
↓
@2,000円×■個-@1,800円×■個-100,000円=200,000円
↓まずは、2,000×■-1,800×■を計算する
200×■個-100,000円=200,000円
↓次に、100,000を移動させる。
200×■個=300,000円
↓最後に、300,000円÷200で■個を求める
■個=300,000÷200
↓
■個=1,500個
ステップ3 1,500個売ったときの売上高を計算する。
@2,000×1,500個=3,000,000円(解答)
(3)損益分岐点比率と安全率
損益分岐点比率とは、当期の売上高と損益分岐点売上高を比較するときに利用する比率。売上高で計算しても、数量で計算してもどちらも同じ結果になる。
安全率(安全余裕率)とは、売上高のうち、損益分岐点を超えている部分を表す比率。
100%=損益分岐点比率+安全余裕率
<個数で計算する場合>
損益分岐点比率 500個÷1,000個=50%(解答)
安全率 100%-50%=50%(解答)
<売上高で計算する場合>
損益分岐点比率 1,000,000÷2,000,000=50%(解答)
安全率 100%-50%=50%(解答)
(4)営業利益200,000円を達成した場合の損益分岐点比率と安全率
すでに(2)で1,500個売るのは計算済み。
<個数で計算する場合>
損益分岐点比率 500個÷1,500個=33.3333…%
→小数点以下第2位を四捨五入
→33.3%(解答)
安全率 100%-33.3333…%=66.6666…%
→小数点以下第2位を四捨五入
→66.7%(解答)
<売上高で計算する場合>
損益分岐点比率 1,000,000÷3,000,000=33.3333…%
→小数点以下第2位を四捨五入
→33.3%(解答)
安全率 100%-33.3333…%=66.6666…%
→小数点以下第2位を四捨五入
→66.7%(解答)
営業利益と貢献利益の違い
売上高-変動売上原価-変動販売費=貢献利益
貢献利益-固定製造費用-固定販売費-一般管理費=営業利益
実際の問題②
売上 @2,000円×1,000個=2,000,000
変動費
変動製造原価 @900×1,000個=900,000
変動販売費 @900×1,000個=900,000
固定費
固定製造原価 50,000
固定販売費 30,000
営業利益 120,000
(1)損益分岐点の売上高を答えなさい。
(2)営業利益200,000円を達成するためには、いくらの売上高が必要か答えなさい。
(3)実際の損益計算書の損益分岐点比率と安全率を答えなさい。
(4)営業利益200,000円を達成した場合の損益分岐点比率と安全率を答えなさい。なお、割り切れない場合には、小数点以下第2位を四捨五入すること。
<解答>
(1)800,000円
(2)2,800,000円
(3)損益分岐点比率40%、安全率60%
(4)損益分岐点比率28.6%、安全率71.4%
<解き方>
(1)損益分岐点の売上高を答えなさい。
ステップ1 まずは1個当たりの変動費と全体の固定費を計算する。
変動費 @900+@900=1,800
固定費 50,000+30,000=80,000
ステップ2 売上と利益の関係を書く。損益分岐点では、利益がゼロになるので、何個売れれば利益がゼロになるのかを考える。
売上高-変動費-固定費=利益
ステップ3 何個売るのか、まだ決まっていないので、■個とする。ステップ1の公式に一つ一つあてはめていく。
売上高 @2,000×■個
変動費 @1,800×■個
固定費 80,000円
利益 損益分岐点なので、利益は0円
↓
売上高@2,000円×■個-変動費@1,800円×■個-固定費80,000円=利益0円
↓
2,000×■個-1,800×■個-80,000円=0円
↓まずは、2,000×■-1,800×■を計算する
200×■個-80,000円=0円
↓次に、80,000を移動させる。
200×■個=80,000円
↓最後に、80,000円÷200で■個を求める
■個=80,000÷200
↓
■個=400個
ステップ3 400個売ったときの売上高を計算する。
@2,000×400個=800,000円(解答)
(2)営業利益200,000円を達成するための売上高
ステップ1 売上と利益の関係を書く。
売上高-変動費-固定費=利益
ステップ2 何個売るのか、まだ決まっていないので、■個とする。ステップ1の公式に一つ一つあてはめていく。
売上高 @2,000×■個
変動費 @1,800×■個
固定費 80,000円
利益 問題文より営業利益は200,000円
↓
@2,000円×■個-@1,800円×■個-80,000円=200,000円
↓まずは、2,000×■-1,800×■を計算する
200×■個-80,000円=200,000円
↓次に、80,000を移動させる。
200×■個=280,000円
↓最後に、280,000円÷200で■個を求める
■個=280,000÷200
↓
■個=1,400個
ステップ3 1,400個売ったときの売上高を計算する。
@2,000×1,400個=2,800,000円(解答)
(3)損益分岐点比率と安全率
損益分岐点比率 400個÷1,000個=40% (解答)
安全率 100%-40%=60% (解答)
(4)営業利益200,000円を達成した場合の損益分岐点比率と安全率
すでに(2)で1,400個売るのは計算済み。
損益分岐点比率 400個÷1,400個=28.57…%
→小数点以下第2位を四捨五入
→28.6%(解答)
安全率 100%-28.57…%=71.42…%
→小数点以下第2位を四捨五入
→71.4%(解答)
あれ?こんなに簡単?
うん、CVP分析は売った数が変化したら、売上や利益がどう変わるのかを確認しているだけだからね。
何でテキストって難しく書いているの?
テキストは、原価計算や財務分析が得意な人が書いているからなんだ。頭が良い人は公式を丸暗記できるから、たくさんの公式を覚えてるんだ。僕は頭悪いから、一個だけ覚えて、毎回同じように解いてるから、パブロフくんの気持ちはよくわかるよ。
ふふふ!!ありがとう、パブロフ頑張る~♪
うん、ファイトだね!
29 Comments
大変わかりやすいサイトのご提供、ありがとうございます!
CVP分析② 実戦編(最も簡単な解き方) における
実際の問題②
(4)営業利益200,000円を達成した場合の損益分岐点比率と安全率を答えなさい。なお、割り切れない場合には、小数点以下第1位を四捨五入すること。
について質問なのですが、
計算で28.5714… となる所まではスイスイいけました。
その後が疑問に思った点です。
小数点以下第一位(ここでいう5のこと)を四捨五入、となると
29%なると思ったのですが、何か特殊な約束ごとなどがあるのでしょうか。
わかりにくい説明ですみません。
ご解答お待ちしております。
コメントありがとうございます。
おっしゃるとおり、問題文と解説がおかしいですね。大変申し訳ございませんでした。修正しましたので、よろしくお願いいたします。
いつも、拝見しております。解説がとても分かりやすくて大変役立っております。
売上原価を固定費と変動費に分ける際の質問なんですが、部品の加工を外注に出した際の外注費なんですが、この外注費(直接経費)は売上によって変動する場合、上記で記載されていた参考:直接原価計算ででてくる原価ではどういった原価になりますか?売上高に直接対応するから変動販売費でなく変動加工費だと思うのですが変動加工費は上記では直接労務費と製造間接費になってるので、お手数お掛け致しますが教えて頂けないでしょうか?
コメントありがとうございます。
直接経費が変動費の場合、変動加工費に含められることになります。工業簿記の問題では直接経費が出てこない場合がほとんどですので、念のために確認する程度で大丈夫ですよ。
変動費や固定費は、管理費一般販売費なども含めて求めるのですよね?
cvp分析は直接原価計算だから、変動製造費と変動管理費を分けたりしないということでいいのでしょうか。
コメントありがとうございます。
変動費は、変動製造原価+変動販売費です。
固定費は、固定製造原価+固定販売費+一般管理費です。
販売費は、変動販売費と固定販売費に分けます。一般管理費は、すべて固定費です。テキストをお持ちでしたらP.344に書いてありますので、確認してみてください。
テキスト344ページ確認しました!ありがとうございます。お恥ずかしいですが4度目のチャレンジなのにまだまだですね、、でも頑張ります。
解決したようで良かったです。合格を応援してします!
CVP分析、シュラッター図…苦手と思っていたところがスイスイ解けるようになりました!!本当にありがとうございます。
お役に立ったようで嬉しいです♪
こんばんは、いつもサイト拝見しています。
CVP分析なのですが、公式を覚えずすべてグラフで解くと個人的にはすごく簡単に解けるように感じるのですが、公式はやはり覚えておいた方がよいのでしょうか?
解きやすい方法で構いませんので、グラフで解いて大丈夫です。
ただ、条件が変更された場合などの応用的な問題では、グラフだと条件変更を反映し忘れることが多く、間違えやすいので注意してください♪
早速のお返事ありがとうございます。基本的には問題ないとのことで、ひとまずグラフのやり方で問題集を回してみたいと思います。大変助かりました。ありがとうございました。
勉強ファイトです♪
損益分岐点の売上高を求めよ
2000x(売上)-1800x(変動費)-100,000(固定費)=0
X=500個
損益分岐点の売上高=500個x2,000=1,000,000(解答)
と求めるより、
売上-変動費=貢献利益=200x
貢献利益率=200x÷2,000x=0.1
貢献利益=売上高x0.1
→ 売上高x0.1-100,000=0
売上高=\1,000,000(解答)
のように、貢献利益率を使って求めるクセをつけたほうが良いのでしょうか?
販売単価がわからないときは、貢献利益率を使う必要があるので。
ご自身が解きやすい方法でかまいません。利益の公式を変形させているだけで、元の式は同じですから、好きな方法でかまいません。
パブロフの本では、販売単価がわからないときでも貢献利益率を使わずに解いています。売上高や変動費を変化させるタイプの応用問題が出た場合、対応ができなくなる方も多いため、シンプルな解き方にしています(テキスト第2版をご参照ください)。
ご回答ありがとうございます。とてもよく分かりました!
生産量と販売量もですが、変動費と固定費もごちゃごちゃに考えていました…。
テキストを一通りやりましたが、きちんと頭に入っていないことが分かりました。
不安なところは読み返して、たくさんの問題を解いて本番に備えます。
本当にありがとうございました!
ご理解頂けたようで良かったです。何度も解いていると慣れてきますので、大丈夫ですよ♪
またわからないときはお聞きください♪合格を応援します!
独学で2級を勉強しており、11月に受験します。こちらの説明はとても分かりやすく、テキストではよく分からなかったCVPが解けるようになりました。
今やっている問題で「売上高=変動費+固定費+利益」に当てはめても答えが合わない問題が出てきました。
【当社の当月の生産・販売データ】
生産量 2,000個
販売量 1,500個
月初製品 0個
販売単価 @2,500円
直接材料費 1,000,000円(全て変動費)
直接労務費 800,000円(全て変動費)
製造間接費 1,600,000円
(うち変動費900,000円、固定費700,000円)
変動販売費 225,000円
固定販売費・一般管理費 230,000円
*直接原価計算の損益計算書を作成していることを前提
損益分岐点の売上高を求める問題です。
答えは「2,325,000円」で、テキストの解説は売上高を「S」とする場合と販売量を「X」とする場合の2通りが掲載されているのですが、この問題は「売上高=変動費+固定費+利益」の式では解けないのでしょうか?
説明が長くなり、申し訳ございません。
どうか教えてください。よろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。
明記して頂いた問題でも公式通り、解くことができます(販売量をXとする場合と同じです)。
ステップ1 必要な情報を計算します。
1個当たりの変動費:(直接材料費1,000,000+直接労務費800,000+製造間接費900,000)÷生産量2,000個+(変動販売費225,000)÷販売量1,500個=@1,500
ステップ2 損益分岐点では利益は0円となるので、損益分岐点で何個売ったのかを■個として、公式に当てはめます。
公式:売上高-変動費-固定費=利益
↓
売上高@2,500×■個-変動費@1,500×■個-固定費(700,000+230,000)=利益0円
↓
1,000■=930,000
↓
■=930個
損益分岐点の売上高 @2,500×930個=2,325,000円
恐らく、間違えた理由は生産量と販売量をごちゃごちゃにして計算されたのではないでしょうか?
生産量は作った量ですので、直接材料費・直接労務費・製造間接費と対応する数量です。
販売量は販売した量ですので、変動販売費に対応する数量です。
本問では、2,000個作って、1,500個は販売し、500個は製品在庫として持っています。
CVP分析は、計算パターンが決まっていますので、最初は難しく感じると思いますが、自然と慣れてきます。
「販売個数を■個とする場合」と「売上高を■円とする場合」の2パターンですべての問題を必ず解くことができますので、ご安心ください(工業簿記テキスト第2版参照)。
納得です!!こんな簡単な事を聞いてしまい..でも聞かないと独学の私にはずっと理解出来なかったと思います!この本を買って苦手な工業簿記も解けるようになってきて感謝してます!11月の試験に向けて勉強頑張ります★
ご理解頂けたようで良かったです♪
11月の試験、合格を応援しています!
ここのサイトを知ってから総仕上げを買わせて頂きました!先生の丁寧で分かりやすいお返事とか見ていたら本が欲しくなりました^o^
早速なんですが質問お願いします。.Chapter11 04が分かりません(;_;)ここまでスムーズに勉強してきたのですが、250ページの変動費■×0.4がどうして次の式で0.6になるんですか(T_T)式が出来ないなんて根本的にダメですよね..
総仕上げ問題集をお使いくださり、ありがとうございます。
売上高■円-変動費0.4■円を計算すると、0.6■円になります(数式としては「x-0.4x=0.6x」という意味です)。
売上高を100とすると、変動費は100×0.4と表せます。売上高100×1-変動費100×0.4を計算すると、100×0.6となります。
まとめますと、1-0.4=0.6を計算しています。
こちらで大丈夫でしょうか。
ちなみにアプリでもお世話になってますo(^-^)o
アプリをお使いくださり、ありがとうございます。
ブログの内容がお役に立てたようで嬉しいです。勉強頑張ってください♪
とってもわかりやすいです!
独学で勉強してると何度も壁にぶち当たり、今度こそダメかと思いましたが、今回のは本当に助かりました。ありがとうございます、なんとかなるかも、、がんばります。
売上高を算出する「売上高=変動費+固定費+利益」の公式で、答えが出ない問題にぶつかってしまいました。
例えば、販売単価が書かれていなく、損益計算書の情報だけで損益分岐点を求めよとなっている場合は、どうやって算出するのですか?回答には「貢献利益率を出して、その利益率で固定費を割る」とありますが、できれば同じ解き方で統一して覚えたいです。
もう一問は、販売単価120円、売上高85,000円、変動費34,000円、固定費30,600円となっているときの損益分岐点売上高を求めよとなっている時です。上記の公式で求めようとしたら端数が出てしまい、やはり回答には「貢献利益率を出して~」とあります。
こんな時期にこんな質問をしているなんてと我ながら思いますが、全然分かりません。教えてください。よろしくお願いします。
コメントありがとうございます。
販売単価が書かれていない場合については、
パブロフ流 簿記2級工業簿記 総仕上げ問題集 Chapter11問題04に解説していますので、
書店でご覧になって頂けますと幸いです。
端数の計算は、電卓で計算する場合に割り算を最後にすると端数が出ませんのでお試しください。